子育て研究コラム

理事コラム|柳田 信之さん

感幸(観光)都市のブランディングを手掛ける柳田信之さんが考える「町づくりと子育て」をお届けします。

【町づくりと子育て】

現在私はまちづくりのお手伝いをする仕事をしています。
そのなかで思うことは、
理想的なまちづくりのために
その土地を有効的に利用し
インフラを整えたとしても
そこに住む人の意識や想いや文化を受けとめて
人繋がりを高める場づくりを考慮していかねば
本当の街づくりにはなりません。
これは、子育てにも似ていて、
いくら立派な家に住み不自由のない生活をしていても
親の想いや愛情が注がれなければ
子どもは健全には育たないのと似ています。


確かに昨今のスーパーテクノロジーの進化には
目を見張るものがあります。
空飛ぶクルマ、自動運転車、循環エネルギー、バーチャル・クローン人間、AI、IOT、3Dによる物作り、
未来のまちづくりにはこれらの技術を取り入れた
スマートシティ化は当たり前になりました。
しかし高度の科学の進化と人間の幸せな暮らしが
必ずしも一致するとは限りません。
過度にデジタル化されたまちは
人間の生体のリズムを超え、
生きる上で不自然な社会をつくり上げることに
なりかねません。
ITやロボットの指示通りに暮らす
チャプリンの「モダンタイム」のデジタル版
になる恐れがあります。


既にアメリカではその現象が現れ始め、
若者は朝起きるとまずパソコンに向かい、
自分の趣味や仕事と関係ない情報に
アクセスするそうです。
それを何回も繰り返し、
検索によって自分の思考性や好みを分析され、
情報や商品案内で溢れないように
企業のAIの情報処理を混乱させているのです。
いつでも自分の好きな情報を入手できる状況は、
一見便利で良さそうに思えますが、
その人の好奇心や考える力を奪ってしまうことにもなるのです。
手軽な豊かさは人間を堕落させ、
安易な便利さは人間を劣化させます。
もしこれからの子どもたちが
そのような状況に慣れてしまったらどうなるでしょう


新型コロナの影響で、
すでにまちの中の子どもたちが活動する地域や学校、
家庭の在り方が変わってきています。
子どもたちを取り巻く環境も
急激なIT化を余儀なくされています。
この変化が子どもたちの成長や心身に
どのように影響していくかは
もう少し時間を掛けないとわかりません。


持続可能な開発も環境の保護、クリーンなエネルギー、飢え、差別、教育など
現在見えている課題だけでは十分ではありません。
まだ見えていない問題を孕むこれからの世の中であっても、
子供たちが健やかに育ち、大きな可能性と夢を広げられる
まちづくりをするのが私たちの責任だと思っています。


商業施設、オフィス、病院、住宅、公園などのハードといわれるものだけではなく、
そこに生きる人たちが「幸せを感じる」まちづくりが
これからの日本には、ますます必要になるでしょう。
情感を育み、自然の恵み、文化や歴史の香りを感じる
まちづくりをしたいと考えています。


柳田 信之さん

大手専門店に入社。開発室、店長、商品開発部、社長室マーケティング部、営業企画マネジャーなど中枢部要職を歴任。